本能と仕事
仕事のどこに注意が向くか
本能は、注意がどこへ向きやすいかの違いです。仕事に当てはめると、次のように分かれます。
- 自己保存:この働き方を続けられるか。収入、時間、体力、職場の環境。仕事を、暮らしを支える土台として見ている
- 社会:この仕事が全体のどこにつながっているか。チームや組織の中での役割、自分の位置、周りからの期待
- 融合:このテーマに入り込めるか。面白い問い、一緒に熱を上げられる相手、時間を忘れて取り組める対象
どれが正しい働き方ということはありません。三つとも、仕事には要ります。ただ、注意には限りがあるので、どこかに多く向けば、どこかが手薄になります。手薄になったところを、本人は見落としやすくなります。以下は、囚われが出ているときの形として読んでください。
自己保存が優勢のとき:続けられる形をつくる
新しい仕事を引き受けるとき、自己保存が優勢の人が最初に考えるのは、中身より条件のことが多いです。締め切りはいつか。残業はどのくらい増えるか。今の仕事と並べて、体がもつか。条件が見えないまま「とりあえずやってみよう」と言われると、落ち着かないことが多いです。
進め方にも出ます。手順を決めて、毎日同じ流れで片づける。資料のひな形を作っておき、次からはそれを使う。忙しい時期が来る前に、先回りして準備しておく。派手ではありませんが、仕事が止まらずに回り続けるのは、こうした下ごしらえがあるからです。
仕事を選ぶときは、収入の安定、通勤の距離、休みの取りやすさを重く見ます。「やりがいはあるけれど、生活が回らない仕事」は選びにくい。周りから「保守的」「冒険しない」と言われることもあります。本人の中では、無理なく長く続けるために選んでいるつもりのことが多いです。
囚われが強く出ると、条件を守ることが目的になりやすくなります。決まった手順から外れる仕事を断る。新しいやり方を試す前に、負担が増えることばかり考える。仕事が回っていても、自分がどこに向かっているのかが見えにくくなります。
社会が優勢のとき:全体の中での役割を探す
社会が優勢の人は、仕事を任されたとき、全体のどこにつながっているかを知りたがります。この資料は誰が読むのか。この案件は、会社の方針のどこに関わるのか。つながりが見えると動きやすくなり、見えないと、手を動かしながらも落ち着かないことがあります。
進め方では、関係する人や部署の状況を先に確かめます。誰に話を通しておくか。どの部署が困っているか。業界で今どんな話題が出ているか。人付き合いのためというより、自分の仕事が全体の中でどう受け取られるかを見ています。
仕事を選ぶときは、組織で自分がどんな役割を持てるか、仕事が世の中のどこに関わっているかを重く見ます。肩書きや会社の名前が気になる人もいれば、社会の役に立っている実感を大事にする人もいます。どちらも、全体の中での自分の位置を見ています。
囚われが強く出ると、全体からどう見えるかが先に気になりやすくなります。評価されやすい仕事に手を挙げ、目立たない仕事を後回しにする。期待に応えようとして、自分が本当は何をやりたいのかが分からなくなる。役割が変わったとき、自分の価値まで下がったように感じることもあります。
融合が優勢のとき:一つのテーマに入り込む
融合が優勢の人は、仕事の中に、夢中になれるテーマがあるかどうかで力の出方が大きく変わります。面白い問いが見つかると、時間を忘れて調べ、考え、試します。気づくと夜中になっている。逆に、入り込めない仕事は、量が少なくても重く感じやすいです。
進め方にも波があります。一つのことに集中している間は、ほかの仕事が止まりがちです。浅く広く同時に進めるより、一つずつ深く片づけるほうが合っている人が多いです。一緒に熱を上げられる相手がいると、さらに勢いがつきます。
仕事を選ぶときは、条件や肩書きより、テーマに惹かれるかどうかを重く見ます。収入が下がっても、面白い仕事に移ることがあります。周りからは「飽きっぽい」「極端」と見られることもあります。本人の中では、入り込める先を探しているつもりのことが多いです。
囚われが強く出ると、夢中でなくなったテーマから、急に離れやすくなります。始めた仕事が最後まで続かない。入り込めない事務作業を溜める。熱のある時期に引き受けすぎて、熱が下がったあとに抱えきれなくなることもあります。
盲点のとき:何が抜けやすいか
仕事の中では、盲点の本能が受け持つところが、気づかないうちに抜けていきます。本人には見えにくいので、周りに言われるか、困ったことが起きてから気づくことが多いです。
自己保存が盲点のとき
体の手入れと、お金や時間のやりくりが抜けやすくなります。面白い仕事や、期待されている仕事に夢中になって、睡眠や食事が後回しになる。給料の交渉や契約の条件を細かく見ないまま引き受ける。何か月も無理を続けて、ある日まとめて体調を崩してから気づくこともあります。
社会が盲点のとき
自分の仕事が全体のどこにつながっているかを確かめることが抜けやすくなります。いい仕事をしているのに、関係する人に伝えていないので、周りに知られていない。組織の方針が変わったことに気づかず、自分は前のやり方を続けている。評価の場面になって初めて、見られ方がずれていたことに気づくことがあります。
融合が盲点のとき
一つのテーマに入り込むことが抜けやすくなります。仕事は安定して回っていて、役割も果たしている。それでも、何年も同じことを続けているうちに、何が面白くてこの仕事をしているのかが分からなくなる。「特に不満はないけれど、熱くなれるものがない」という形で表に出ることがあります。
仕事の上手さと、本能は別のこと
仕事の中で身につけた上手さは、本能とは別の層です。取り違えやすいので、分けて見ておきます。
経理を何年も担当して、お金の管理がきっちりできるようになった人が、自己保存が優勢とは限りません。営業や管理職で、社内の力関係を読むのが上手になった人が、社会が優勢とは限りません。研究職で一つのテーマを長く掘ってきた人が、融合が優勢とは限りません。仕事に必要だから身につけた、ということがよくあります。
その仕事がなくなったときにどう感じるかが、見分ける手がかりになります。物足りない、さみしいと感じるなら、本能から来ているのかもしれません。特に困らない、むしろほっとするなら、仕事のために身につけた上手さかもしれません。「みんなといるときと別人」と言われる理由で扱った、場面による見え方の違いと同じで、仕事の姿から本能を決めないでおくと確かです。
同じ本能でも、タイプで中身が変わる
同じ本能でも、仕事の中で何を守ろうとしているかは、エニアグラムのタイプで変わります。たとえば、自己保存が優勢の人が、同じように「仕事の手順を固める」としても、囚われが出ているときの中身はこう分かれやすくなります。
- タイプ1:手順が正しく守られていないと落ち着かない。人の手順の乱れまで、黙って直して回ることがある
- タイプ5:自分の時間と体力を減らさないために手順を固める。予定外の頼まれごとが入ると、強く消耗しやすい
- タイプ6:何かあったときに困らないように手順を固める。決めた手順を変えることに、不安を感じやすい
外から見た動きは同じでも、手順を崩されたときの反応が違います。本能を見ると仕事のどこに注意が向くかが分かり、タイプを見ると何を守ろうとしているかが分かります。
自分で確かめるには
仕事について、最近いちばん気がかりだったことを一つ思い出してみてください。続けられるかどうかの心配だったか。周りからどう見られているか、全体の中で役に立てているかだったか。面白いと思えるものがあるかどうかだったか。
もう一つ、仕事を辞めたい、変えたいと思ったときの理由も手がかりになります。条件が合わなくなったからか、居場所や役割が見えなくなったからか、入り込めるものがなくなったからか。何度か同じ理由で動いているなら、優勢の本能に近いのかもしれません。逆に、ほとんど気にしたことがない理由があれば、盲点を探す手がかりになります。
三つの並びを確かめたい人は、本能サブタイプ診断を受けてみてください。仕事の場面に加えて、家や友人といる場面も思い浮かべて答えると、仕事のために身につけたものと混ざりにくくなります。仕事に何を求めているかを整理したい人は、エニアグラムで適職はわかるかもあわせて読んでみてください。