「みんなといるときと別人」と言われる理由
同じ人が、集団と一対一で別人になる
たとえば、こんな場面です。
- 飲み会で場を回していた人が、帰り道に二人になると、急に口数が減る
- 会議ではほとんど発言しない人が、1on1になると、止まらずに話し続ける
- 大勢でいるときは誰にでも愛想がいいのに、二人で会うと、少しそっけない
- 初対面では物静かだった人が、何度か会ううちに、冗談ばかり言うようになる
どちらかが本当の姿で、どちらかが演技、ということではありません。両方とも、その人です。職場にいるときの自分、家族といるときの自分、昔からの友達といるときの自分。誰でも、相手や場に合わせて、見せる面を少しずつ変えています。
困るのは、違いが周りから見て大きいときです。ある場面の姿しか知らない人が、別の場面の姿を見ると、「別人みたい」「裏表がある」と感じます。では、何が違いを生んでいるのでしょうか。
前提:人によって、大事にするものが違う
理由を見る前に、一つ前提を置いておきます。人といるときに何を大事にするかは、人によって違います。
ある人は、場全体がうまく回っているかを大事にします。誰と誰がつながっているか、輪から外れている人はいないか。ある人は、目の前の一人と通じ合えているかを大事にします。この人はどんな人か、どこまで本音で話せるか。ある人は、自分が無理なくそこにいられるかを大事にします。落ち着ける場所か、疲れていないか、いつ帰れるか。
大事にするものが違うと、同じ場面でも、受け取り方が分かれます。大勢の飲み会は、場全体を大事にする人には、気にかける相手がたくさんいる場所です。目の前の一人を大事にする人には、深く話せる相手を探す場所です。自分の居心地を大事にする人には、体力を使う場所です。
大事にするものの違いは、時間と注意と体力の配り方の違いでもあります。一日に使える時間も、注意も、体力も限られています。どこかに多く配れば、どこかが薄くなります。場全体に気を配る人は、目の前の一人の話を深く聞くことが手薄になります。一人と深く話し込む人は、場全体や自分の体調に気が回らなくなる。自分の居心地を守る人は、場や相手に踏み込むのが後回しになります。
三つを全部、同じように厚くするのは難しいことです。誰の付き合い方にも、厚いところと薄いところがあります。人付き合いは、凸凹です。そして、薄いところは本人には見えにくい。自分の凸凹のどこが薄いかを知っておくことが、この先の話の出発点になります。
凸凹は、広さと深さにも出ます。どんな人付き合いにも、何人と付き合うかという広さと、一人とどこまで付き合うかという深さがあります。知り合いを増やすほど、一人に割ける時間と注意は減ります。深く付き合える相手は、一度にそう多くは持てません。広さも深さも同時にいっぱいにしようとすると、どちらも中途半端になります。場全体を大事にする人は知り合いを広げることに、目の前の一人を大事にする人は一人と深く付き合うことに、時間と注意を多く使いやすい。ただ、少ない人数の集まりを長く大事にする人もいますし、深く付き合う相手を何人か持つ人もいます。
自分の居心地を大事にする人は、少し違うところに出ます。そもそも人付き合いにどれだけの時間と体力を使うか。どこで「今日はここまで」と線を引くか。この線がはっきりしている人は、周りから「付き合いが悪い」「壁がある」と見られることがあります。この線を引きにくい人は、人付き合いに時間と体力を使いすぎて、あとでまとめて疲れが出ます。
自分と相手の境目の引き方も、人によって違います。目の前の一人を大事にする人は、境目がなくなるくらい通じ合うことを求めます。場全体を大事にする人は、場の期待に合わせているうちに、場のためにしていることと、自分がしたいことの区別がつかなくなることがあります。自分の居心地を大事にする人は、自分の時間、お金、体力の範囲として、境目を引きやすい。ただ、これは暮らしの線で、気持ちの線とは別です。身内のことを自分のことと同じに扱って、気持ちの線が引けない人もいます。気持ちの線を引きやすいかどうかは、タイプによっても大きく変わります。
大事にするものは、場面が変わってもあまり変わりません。変わるのは、条件です。何人でいるか、誰といるか、どれくらい付き合っているか。条件が変わると、その人が大事にしているものが、その場にあるかどうかが変わります。条件が変わると、凸凹のどこが表に出るかも変わります。だから同じ人の振る舞いが、条件ごとに分かれていきます。以下、条件を三つ見ていきます。
条件(1):集団か、一対一か。場が求めるものが違う
集団の場と一対一の場では、そもそも求められることが違います。
集団には、役割が生まれます。話を回す人、盛り上げる人、聞いている人、時間を気にする人。誰かが話している間、ほかの人は順番を待ちます。周りの目もあります。話題は、その場の全員が分かるものになりやすい。一人ひとりへの注意は、人数のぶんだけ薄まります。
一対一には、役割がありません。相手の注意は全部こちらに向いていて、黙っていると、その沈黙が目立ちます。話題は二人で決められるので、集団ではしにくい深い話もできます。逃げ場がないぶん、その人のふだんのペースや、相手との相性がそのまま出ます。
集団で役割を引き受けて動いていた人が、一対一で役割がなくなって静かになる。集団では順番を待っていた人が、一対一で話し出す。冒頭の場面の多くは、役割のあるなしで説明がつきます。
条件(2):誰といるか。相手との組み合わせが違う
同じ一対一でも、相手によって別人になります。ある人とは初めて会った日に何時間も話し込んだのに、別の人とは何度会っても天気の話から先に進まない。ある友達といると自分はよくしゃべる側になり、別の友達といると聞き役になる。変わっているのは、場ではなく相手です。
相手によって変わるのは、二人がそれぞれ大事にしているもの、つまり注意が向くところが違うからです。前提で見た三つの大事にするものには、エニアグラムで名前がついています。本能のサブタイプです。
- 自己保存(SP):自分の体と暮らし。ここは落ち着けるか、疲れていないか、お金や食べ物は足りているか
- 社会(SO):集団と場。誰と誰がつながっているか、場がうまく回っているか、自分は何を求められているか
- 融合(SX):特定の一人や、一つのもの。強く惹かれる相手のこともあれば、没頭できる仕事や趣味のこともある
三つとも誰にでもありますが、どれにいちばん注意が向きやすいかは人によって違います。いちばん向きやすいものを優勢、いちばん向きにくいものを盲点と呼びます。
二人が同じところに注意を向けやすいと、話が噛み合います。融合が優勢の二人は、初対面からすぐに深い話に入ります。社会が優勢の二人は、共通の知り合いや、仕事の場の話で盛り上がります。自己保存が優勢の二人は、落ち着いた店で、あまり話さなくても気まずくなりません。
向ける先が違うと、ずれが出ます。片方は二人の話をしたいのに、片方は周りの人の話をしたい。片方は早く深い話に入りたいのに、片方は自分のペースを崩したくない。どちらも悪くありませんが、深くは入りにくくなります。
相性のよしあしを決める表ではありません。どこで噛み合い、どこでずれやすいかを先に知っておくための、攻略の手がかりです。相手の本能は決めつけず、振る舞いから当たりをつけるくらいで使ってください。具体的な付き合い方は、本能ごとの記事に書いています。実際には三つの並び全体で決まります。いちばん入りにくいのは、片方の優勢が、もう片方の盲点になっている組み合わせです。片方がいちばん大事にしているものが、もう片方には、ほとんど目に入っていません。逆に、同じ本能が優勢の二人は、盲点も同じになりやすく、二人とも気が向かないことが、そのまま放っておかれます。
集団と一対一の違いも、組み合わせで説明がつきます。集団の中では、話す相手を選べます。噛み合う人のところへ行けばいい。一対一では、組み合わせが決まっています。だから一対一のほうが、相手によって振る舞いの振れ幅が大きくなります。大勢の中では誰とでもうまくやっている人が、二人きりになると、相手によってまったく違って見えるのは、そのためです。
同じ相手でも、集団の中と二人のときで、組み合わせの感じ方が変わることもあります。融合が優勢の人から見ると、社会が優勢の人は、とくに戸惑う相手です。集団の中では、よく話し、間をあけずに次の話題へ移り、こちらの話を受け止める前に場が進んでいく。二人で会うと、ちゃんと話を聞いてくれる。それでも、どこか浅いと感じる。社会が優勢の人は、二人でいても、相手を関係や場の一部として丁寧に扱います。融合が優勢の人には、それが人間としてではなく、場として扱われていると感じられます。詳しくは人間関係の中の社会(SO)に書いています。
(1)の場が求めるものは、誰にでも同じように働きます。(2)の組み合わせは、相手が変わるたびに変わります。同じ人が、場面ごとに、相手ごとに違って見えるのは、場と組み合わせが重なっているからです。
条件(3):付き合いの長さ。時間がたつと、見える範囲が広がる
三つめの条件が、付き合いの長さです。人間関係の多くは、いきなり深くはなりません。だいたい次のように進みます。
- 大勢の中で出会う
- 同じ集まりや職場で、何度も顔を合わせる
- 二人で会って話すようになる
- 旅行や同居など、暮らしの一部を一緒に過ごすようになる
段階が進むと、一緒にいる人数は減って、付き合いは長くなります。人数と長さを縦と横に並べると、人間関係の地図ができます。
多くの関係は、左上から始まって、右上を通り、右下へ進みます。面接や初めての打ち合わせのように、最初から二人で会う関係もあります。
初対面では、相手のことが分かりません。だから、誰に見られても困らない面と、その場の役割の面を見せます。何度か会って警戒が下がると、冗談や好き嫌いが出てきます。疲れたときの様子、怒り方、お金や食事の習慣、部屋の片づけ方は、長く付き合って、暮らしが見える距離まで来ないと見えません。相手に求めるものも変わります。最初は一緒にいて楽しいかどうか。長くなると、信頼できるかどうか。
組み合わせの噛み合い方も、時間で変わります。噛み合う二人は、早く右下のマスへ進みます。噛み合わない二人は、右上のマスで、顔見知りのまま長く過ごすこともあります。また、関係が進むと、二人で向き合うものが変わります。付き合っているあいだは二人の時間が中心でも、一緒に暮らすと、家計や家事、寝る時間が加わります。融合の話で噛み合っていた二人が、暮らし始めてから自己保存の違いでぶつかる、ということが起きます。ずっと一緒にいたのに、ある時期から急に違う面が見えてくるのは、そのためです。
「第一印象と違う」と言うとき、そこには人数の変化と、付き合いの長さの変化が、たいてい混ざっています。どちらで変わって見えたのかは、二つを分けると見えてきます。
本能ごとに、変わり方が違う
三つの本能が、地図のどのマスでよく見えるかを塗り分けると、こうなります。色が濃いマスほど、その本能がよく見える場面です。
塗り方は目安です。同じ本能の中でも、どの部分が強いかで濃さは変わります。
- 社会は、集団か一対一かで大きく変わります。付き合いの長さではあまり変わりません。社会(SO)は、集団と一対一でどう変わるか
- 融合は、人数と付き合いの長さの両方で変わり、二人で、仲良くなってから濃くなります。融合(SX)は、初対面と仲良くなってからでどう変わるか
- 自己保存は、人数ではあまり変わらず、暮らしが見える距離まで来て見えてきます。場所と体調でも変わります。自己保存(SP)は、いつ見えてくるか
人付き合いの中の自己保存は、何を話すかより、付き合いの条件と量に出ます。どこで会うか、何時に帰るか、どのくらいの頻度で会うか。出方も、来ない、早く帰る、予定を削る、という引き算になりやすい。会話を見ているだけでは、三つの本能の中で、自己保存がいちばん見えにくくなります。
自分で確かめるときは、四つのマスを埋めてみる
自分で自分の本能を考えるときも、どのマスの自分を思い浮かべるかで答えが変わります。職場や集まりの自分を思い浮かべて診断を受けると、社会が強く出やすくなります。パートナーや親しい友人といる自分を思い浮かべると、融合や自己保存が強く出やすくなります。受けるたびに結果が変わる人は、思い浮かべている場面が毎回違うのかもしれません。
確かめるときは、四つのマスに入る場面を、最近のことから一つずつ思い出してください。そして、それぞれの場面で何が気になっていたかを書き出します。四つとも同じことが気になっていたなら、それが優勢に近いものです。どのマスでも気にしていなかったことは、盲点を探すときの手がかりになります。結果がしっくりこないときは、本能サブタイプ診断を、思い浮かべるマスを変えてもう一度受けてみてください。