エニアグラムは、どう勉強すればいいのか
「エニアグラムは、どうやって勉強すればいいのか」。よく聞かれる問いですが、答えるのは意外と難しい問いです。まず、理論と体感の両方が要ります。片方では足りません。しかも、両方そろえてもまだゴールではありません。何をどこで学ぶといいのかを、場所ごとの得意・不得意と一緒に整理します。
| 段階 | 向いている場所 | ここで得られるもの |
|---|---|---|
| 入口 | Web診断 | 仮置きのタイプ。説明を自分ごととして読むための足場 |
| とっかかりと腹落ち | 対話(セッションなど) | 自分の具体的な場面と、理論のつながり |
| 理論 | 本、複眼道場の記事 | 9タイプ、センター、ウィング、健全度、本能の体系 |
| 体感 | 知識のある人と話す場(ワークショップなど) | 自分の「普通」が普通ではないと知る経験 |
| 実戦 | 日常 | 気づいて、使うか使わないかを選ぶ練習 |
理論は、本に書いてある
理論の中身は、本に書いてあります。9つのタイプ、3つのセンター、ウィング、健全度、本能。体系として整理された本は何冊も出ています。費用もかからず、自分のペースで読めます。網羅するという目的なら、本より効率のいいものはあまりありません。
でも、概念が頭に入ってこない
書いてあることと、わかることは別です。「センターには本能・感情・思考の3つがあり」と読んでも、文字の上を目が滑っていきます。センターとは何か、自分のどこを見ればいいのか、で止まります。
要るのは、とっかかりです。自分の日常のどこを見れば、その概念が見えるのか。たとえばセンターなら、怒りから入る方法があります。人は何に怒るかで、何を守っているかが分かるからです。
自分の価値を否定されたときにカチンとくるのか。先が読めなくなったときにざわつくのか。自分の領域に踏み込まれたときにムッとするのか。どれがいちばん身に覚えがあるかが、3つのセンターの手がかりになります。「センター」という言葉を知らなくても、最近ムッとした場面なら思い出せます。そこから入れば、概念のほうが後からついてきます(怒りで自分を読む)。
Web診断は、自分ごとにして読むための入口
自分がどのタイプか見当がついていないと、9タイプ分の説明が全部「一般論」として流れていきます。読み物としては面白くても、自分の話になりません。
診断を一度受けておくと、読み方が変わります。「タイプ3が高く出たけど、本当に?」と思いながら読むので、説明の一文ごとに、自分の場面を当てにいくようになります。自分ごととして読めるようになります。
ただし、Web診断の結果は答えではありません。エニアグラムは、表に出ている行動ではなく、目に見えない動機でタイプを分けます。それをWeb診断で完全に洗い出すことはできません。いまの状況のかたよりも乗るし、自分にとって心地いい選択肢を選んでしまうこともあります。診断はタイプを確定しません。結果は「仮置き」くらいがちょうどよく、読んでいて引っかかったときに「違うかも」と気づくための足場として使います(タイプ診断は無料で、登録なしで使えます)。
自分で読んでも、腹落ちしにくい理由
概念がわかっても、次の壁があります。読めばわかった気にはなります。でも、腹には落ちにくい。
エニアグラムが扱っているのが、自分の囚われだからです。囚われは、本人にとっての「普通」です。普通すぎて、内側からは見えません。本に「タイプ8は弱さを見せることを恐れる」と書いてあっても、読んでいる本人は「別に恐れてはいない。見せる必要がないから見せていないだけ」と受け取ります。
本を読んでいると、どのタイプも自分に当てはまる気がしてくることもあります(「全部当てはまる」は失敗じゃない)。逆に、なりたいタイプを無意識に選んでしまうこともある。本は、こちらの質問に答えてくれないのです。
腹落ちには、対話が効く
自分の具体的な話を材料にして理論をなぞると、腹落ちが起きやすくなります。「最近カチンときた場面」をひとつ取り上げて、そこで何を守ろうとしていたかを一緒に見ていく。そうすると、本で読んだ「根っこの恐れ」が、急に自分の話になります。
ただし、理論を網羅したいなら本のほうが早いです。対話は本の代わりではなく、本の補助です。本で目が滑った概念に、とっかかりから入り直すのに使います。
広げる前に、根っこを確かめる
勉強を進めると、さまざまな拡張理論や流派の考え方に出会います。センターごとに1つずつ、3つのタイプを組み合わせて見るトライタイプも、そのひとつです。本や人によって、説明の力点が違うこともあります。
組み合わせが増えると、当たっている感じは強くなります。ただ、学び始めのうちに広げすぎると、自分の核になる動機を掘る前に、いくつかのタイプの説明を貼り合わせた像で、自分をわかった気になりやすくなります。いちばん認めたくない恐れに触れないまま、先に進めてしまうこともあります。
拡張された考え方にも、それぞれの持ち場があります。そのうえで、学ぶ順番としていちばん大事にしてほしいのは、センターです。9つのタイプのどれかを当てるより先に、自分が恥・不安・怒りのどれを軸に動いているか(ハート・ヘッド・ガッツ)を確かめる。センターが定まると候補は3つに絞れて、ウィングや本能の説明に引っぱられて迷うことも減ります。反対に、センターを取り違えたまま細かく分けていくと、その先の読みが全部ずれていきます。
センターの次に、ひとつのタイプの根っこの恐れと、健全度による出方の幅を、自分の場面で確かめる。広げるのは、それからでも遅くありません。
体感には、時間がかかる
ここで言う体感は、日常の中で「いまの自分、あれをやっている」と気づけることです。怒った瞬間、落ち込んだ瞬間、妙に張り切っている瞬間に、自分のパターンが見える。
これは年単位で育つものです。スキルを覚えるというより、視力をゆっくり育てる感覚に近い。知識を入れた次の日からできる、という種類のものではありません(エニアグラムを学ぶことで何を目指すのか)。
一人でもできますが、自分で自分を解釈してぐるぐる回るだけになりやすい。気づいたつもりの解釈が、実は囚われの上塗りだった、ということも起きます。
体感を育てるなら、知識のある人と話せる場
自分とは違うタイプの人が、同じ出来事をまったく違う受け取り方をしている。それを目の前で聞く経験が、体感にはよく効きます。「え、そこで怒るの?」「え、そこで怒らないの?」。自分の普通が、普通ではなかったと知る瞬間です。本を読んでいても、これは起きません。
相手にもタイプ理解があると、話がタイプの構造の上で進みます。知識のない人同士だと「性格の違いだね」で終わりがちなところから、先に進めます。
知識とタイプ理解のある人が集まって話せる場を、日本でいちばんコストと時間をかけて作っているのは、日本エニアグラム学会です。知識とタイプ理解のある人が集まり続け、学び続けている状態を維持するのは、一朝一夕ではできません。理論を早く知りたい人には丁寧すぎると感じる面もありますが、時間をかけていること自体が場の価値です。
- 入口は、Web診断で仮置きのタイプを持つ
- とっかかりと腹落ちは、対話で補う
- 理論は、本や複眼道場の記事で入れる
- 体感は、学会のような場で育てる
「協会」じゃないですからね!「学会」ですよ!気をつけてくださいね!大違いですよ!
そもそも、何のために勉強するのか
ゴールは、理論を知ることではなく、現実の場面で使えるようになることです。使い道は大きく3つあります。
自分の成長に使う
自分のパターンに気づいて、それを使うか使わないかを、自分で選べるようになること。囚われを消すことではありません。自動で出ていたものを、自分で握ったスイッチで動かせるようになる。降ろしておくことも選べるようになる。複眼道場では、ここを成長と呼んでいます。
人との関係に使う
よくある使い方が「あの人はタイプ○だから」です。これをやると、相手をラベルで片付けて終わります。自分とは違う受け取り方をする人がいると知ったうえで、自分はどう関わると届きやすいかを考える。相手のタイプを当てるためではなく、自分の関わり方を変える材料として使います。
社会の読み解きに使う
組織や社会にある「当たり前」が、どんな価値観から作られているのか。誰にとって居心地がよくて、誰にとって息苦しいのか。個人の話だと思っていたことが、構造の話に見えてきます。
場面によって、使い方が変わる
同じ知識でも、仕事の場面とパートナーシップでは使い方が変わります。
仕事には役割があります。上司、部下、専門職。囚われが役割の中に隠れていて、「仕事だから」で説明がついてしまう。どこまでが役割で、どこからが自分の囚われなのかを見分けるところから始まります(エニアグラムで適職はわかるか)。
パートナーシップでは、役割が薄くなります。囚われがむき出しで出やすい。同じ喧嘩を何度も繰り返しているなら、そこに二人の囚われの組み合わせがあるかもしれません(エニアグラムの相性 45通り)。
実戦に、正解のやり方はない
同じタイプでも、健全度で別人のように振る舞います。同じ人でも、職場と家で違います。相手が変われば、また違う。本には、ここまでは書けません。書いてあったとしても、あなたの職場の、あなたの上司との関係には、そのままは当てはまりません。
理論は地図です。地図は大事ですが、歩くのは自分の足です。理論を読んで、人と話して、日常でつまずいて、また読む。行ったり来たりしているうちに、少しずつ見えるものが増えていきます。
複眼道場では、この日常での実戦に伴走するために、月1回のセッションと交換日記をやっています。本やワークショップを置き換えるものではなく、そこで得たものを日常に持ち帰って使うところを一緒に見る場です。興味があればプラン一覧をどうぞ。