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複眼道場

トライタイプを扱わない理由

横に27通り広げる前に、根っこと9段階を掘る
「8-2-5」のような3桁の表記を見かけたことがあるかもしれません。各センターから1タイプずつ選んで、3つ束ねて読むトライタイプという枠組みです。結論を先に書くと、複眼道場では道具として扱っていません。理由は大きく2つあります。ひとつは、3タイプの通常の姿を貼り合わせた像になって、枚数は増えても深くならないこと。もうひとつは、自分の恐れを認めないまま、答えのようなものが出てしまうこと。どちらも、掘る作業から時間を奪います。恐れがどこから生まれたかという根っこも、健全度という縦の物差しも、掘らないと見えないところにあります。この記事では、その2つがどこから出てくるのかと、そのことに気づきにくい理由を書きます。

トライタイプとは、どういう枠組みか

エニアグラムの9タイプは、3つのセンターに分かれています。ガッツ(8・9・1)、ハート(2・3・4)、ヘッド(5・6・7)。トライタイプは、この3つのセンターからそれぞれ1タイプずつ選び、3つ束ねて自分を読む枠組みです。

センター含まれるタイプトライタイプでの扱い
ガッツ8・9・1この3つから1つ選ぶ
ハート2・3・4この3つから1つ選ぶ
ヘッド5・6・7この3つから1つ選ぶ

コアタイプが8の人なら、ハートから1つ、ヘッドから1つを足して、たとえば8-2-5。組み合わせは3×3×3で27通りあり、並び順まで区別すればさらに増えます。提唱したのはキャサリン・チャーニック・フォーヴルで、1994年から95年にかけての調査研究から出てきた枠組みです。

トライタイプは、社会的スタイルハーモニクスとは種類が違います。社会的スタイルとハーモニクスは、9タイプを別の角度で束ね直した分類なので、組み合わせの数そのものは増えません。トライタイプは、コアが1つ決まっていても、残りの2つで9通りに分岐します。読む材料が、本当に増える枠組みです。

「当たった感じ」が増えるのは、面積が増えたから

トライタイプを読んで「こっちのほうがしっくりくる」と感じる人は多いです。それ自体は不思議なことではありません。読む記述が3タイプ分になれば、自分と重なる面積も増えます。

診断のあとに「どのタイプにも当てはまる気がする」と感じるのは、読み間違いではなく標準的な反応です(→ 「全部当てはまる」は失敗じゃない)。9タイプの動機は誰の中にもあって、違うのはどれが出発点になっているか。トライタイプは、その「全部当てはまる」に対して、3つまでなら選んでいい、という形の答えを出しています。受け皿としてよくできています。

ただ、納得が増えたことと、その読みが使えることは、別の話です。記述を増やせば納得は増える。だとすると「しっくりきた」は、増やしたことの結果であって、役に立つかどうかの証拠にはなりません。分けておかないと、増やせば増やすほど良い読みだ、ということになってしまいます。

そもそも、この手の読みが正確かどうかは、確かめようがありません。エニアグラム自体、なぜ9なのかに答えていない枠組みです。複眼道場が採っているのは、当たっているかどうかではなく、道具として使えるかどうかという基準です(→ 囚われの形成)。トライタイプも、同じ基準で見ます。

3つ貼り合わせても、掘ったことにはならない

トライタイプの記述は、3タイプそれぞれの通常の姿を貼り合わせたものになります。貼り合わせること自体が雑なのではありません。枚数を増やす作業と、掘る作業が別だ、というだけです。

タイプを1つに絞る作業は、対象を1点に定める作業です。定まるから、そこに健全度という縦の物差しを通して、割り直せます。

解説記事に出てくるタイプ像が、たいてい通常の状態を平均した姿になっているのは、そのとおりです。ただ、それは縦を通せば解ける弱点です。同じタイプでも、健全度が高いときと低いときでは別人くらい違う。1タイプに定まってさえいれば、いま自分がどのあたりにいるかを当てにいけます。

3つ束ねると、この順番が逆に回ります。3タイプ分の像を重ねた時点で、輪郭が薄くなる。しかも重ねた像に縦を通そうとすると、どのタイプの健全度の話なのかが決まりません。第1は健全度が高くて第3は低い、という読み方は理屈としては言えますが、そう書かれたトライタイプの記述は、ほとんど出回っていません。

深く読むには、先に1点へ絞る必要があります。絞るために作られた道具立てを、ぼかすために使っている。向きが逆になっています。

掘るというのは、具体的には、自分の囚われが動いている現場を何度も目撃していく作業です。3タイプ分の像を持つことではありません。何を通過すると掘ったことになるのかは、囚われも大事のほうに書いています。

1タイプ + 健全度3タイプを束ねる
作業の向き絞る(解像度を上げる)広げる(輪郭を薄める)
縦を通す対象1つに定まっているどれの話なのか決まらない
読みが外れたとき絞り直しになる順序の違いとして回収できる

他のタイプの顔が出ることは、矢印がすでに説明している

トライタイプが引き受けようとしている実感は、はっきりしています。自分の中に、コアとは別のタイプの顔がある、というもの。ただ、それを説明する道具は、エニアグラムにもとからあります。

統合と分裂の矢印です。タイプ8なら、健全に向かうときにタイプ2の世話焼きが出て、追い詰められるとタイプ5の引きこもりが出る、とされています。さきほどの8-2-5という3桁は、矢印がすでに指している組み合わせと同じです。

違うのは、矢印はいつ出るかまで言うところです。2の顔が出ているなら状態が上がっている、5の顔が出ているなら追い詰められている、と読めます。同じ3つのタイプを並べていても、矢印は健全度と結びついていて、トライタイプは結びついていません。並べたところで止まります。

ひとつ断っておくと、この読み方には異論があります。ナランホは1996年に、片方が統合で片方が分裂という言い方は誤って伝わったもので、自分は両方の線に常に動くという意味で言った、と訂正しています。ただ、どちらの読み方をとっても、矢印が言っているのは動きです。8-2-5という並びは、その動きを抜いて3つ置いたものになります。

矢印の行き先はタイプごとに決まっているので、どのタイプでも3センターに1つずつ揃うわけではありません(2の矢印は4と8で、ヘッドには届きません)。それでも、コアと違う顔が出ること自体は、矢印とウィングで説明がつきます。

外れない形をしている

トライタイプは、外れにくい形をしています。

まず、3つ選べる。次に、並び順が動きます。第2と第3が入れ替わることがあるとされていて、合わないときは順序が違ったという説明でやり直せます。さらに、第2や第3の特徴が自分に見当たらないときは、いまの状況では表に出ていないだけ、と読めます。外れたことにならない経路が、いくつも用意されている。

外れない読みは、更新されません。合わないと感じても、順序を入れ替えるか、いまは出ていないと考えるかで収まってしまうので、その読みを捨てて持ち替える場面が来ない。道具が使えるのは、外れたときに持ち替えられるからです。持ち替える機会の来ない読みは、当たり外れ以前に、使う先がありません。

そして、外れない読みは、受け取る側から見ると占いと同じ手触りになります(→ 占いと複眼道場)。エニアグラムを占いから引き離したいなら、ここは譲りにくいところです。

3桁は、人に貼りやすい
トライタイプは3桁の表記になるので、覚えやすく、名乗りやすく、そして人にも貼りやすい。「あの人は8-2-5だよね」まで一息で行けます。タイプを1つ外から決めるだけでも危ういのに、3つ分の決めつけが一度に乗ることになります。他人のタイプは決めない、という掟は、桁が増えるほど守りにくくなります(→ タイプは自分で決める)。

恐れを認めなくても、答えのようなものが出てしまう

タイプを1つに決める作業が、なぜあれほど時間がかかるのか。情報が足りないからというより、自分がどの恐れで動いてきたかを認めないと決まらないからです(→ 根っこの恐れ)。

タイプは、性格の特徴を詰め合わせたパッケージではありません。センターの根本感情を、自分がどう処理してきたかの答えです(→ 囚われの形成)。だから1つに決めようとすると、認めたくない動機の手前で足が止まります。その止まったところが、そのまま根っこに降りていく入口になります。

3つ選べると、ここを通らずに済みます。認めたくない動機は、第3に置けばいい。

効いているのは、順位がついていることです。第3に置いた時点で、それは自分の中でいちばん弱いもの、という扱いになります。認めなかったわけではありません。認めた形をとったまま、軽くできます。1つしか選べないなら、これができない。恥が自分の根っこだと認めるか、認めないか、のどちらかになります。

憧れているタイプを第2に足すときも、同じことが起きます。第2ならコアを差し替えたことにならないので、抵抗が少ない。1つに決める場面なら「本当にそれが自分か」と踏みとどまるところを、そのまま通れます。

誰かが意図してやっていることではありません。順位をつけて3つ並べる形そのものが、重みを散らします

エニアグラムが効いてくるのは、自分の鎧の出どころが見えたときです。3つに広げる作業は、その手前で横に伸びていきます。

横に増やす 組み合わせを27通りにする 27通りの組み合わせ 縦を見る 同じ1点の中の9段階 健全 不健全 いまの自分 1つのタイプの、9段階
トライタイプが増やすのは、左の横方向です。エニアグラムの縦は、同じ1点の中を上下する9段階です。

(参考)どこから来た枠組みか

トライタイプは、図の幾何からは出てきません。性格の中身を、図の骨格であるセンターの枠で3つ束ねたものです。素材はどちらも借りものですが、束ね方そのものは1990年代半ばに外から加わりました。

もっとも、新しいから駄目だという話ではありません。エニアグラムは一度に作られたものではなく、継ぎ足しでできています。図がいつ来て、性格がいつ載ったのか。どれが図に根を持ち、どれが外から当てたものなのか。この並べ方は三つ組で読む9タイプの後半にまとめてあります。トライタイプに限らず、これから出てくる枠組みにも当てられる物差しなので、そちらへどうぞ。

複眼道場では、扱いません

禁止する話ではありません。面白いと感じる人がいるのは分かりますし、そこから入って理論に興味を持つ人もいます。ただ、道場で使う道具からは外しています。理由は2つです。

1つ目は、掘る時間が削られるから。掘る先は2つあります。ひとつは健全度の上下で、同じタイプの中でいま自分はどのあたりにいるのか、という読み。もうひとつは根っこで、本質があって、受け取れなかったものがあって、恐れが生まれて、その恐れをしのぐために欲求と動機ができて、いまの性格ができあがった、という道筋です。これを自分の記憶と突き合わせて辿っていく作業になります(→ 囚われの形成)。

削られて痛いのは、根っこです。時間がかかるうえに、思い出したくないところも通ります。27通りのどれが自分かを考えている時間は、この道筋を辿る時間と、そのまま入れ替わります(→ 垂直的成長と水平的成長)。

2つ目は、自分で決める作業の、いちばんしんどいところを通らずに済ませてしまうから。複眼道場では、タイプは本人が決めるものだという立場をとっています。決める作業のいちばんしんどい部分が、3つ選べることで消えてしまう。

タイプが1つに絞れないときの手当ては、別に用意されています。ウィングの濃さ、統合と分裂の矢印、健全度、本能の優先順位。この4つで、たいていの「混ざって見える」は説明がつきます(→ タイプに迷ったら)。3つ束ねる前に、まずこちらを一周してみてください。

エニアグラムを学ぶ目的は、自分のパターンを使うか使わないかを、自分で選べるようになることです。そのためには、どのスイッチが自分の手元にあるのかが、1つ定まっている必要があります。

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