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複眼道場

囚われは、まず使い切る
── 手放す前に、使いこなす段がある

囚われは手放すもの、と読めることがある。ただ、手放す前にやることがある。使いこなすほうが先で、そこを飛ばすと進まない。この記事は順番だけを扱う。タイプごとの中身は各タイプの地図に、自己価値そのものは別の記事にある。
各タイプの地図 この記事 本質 根源的恐れ 根源的欲求 自己価値 囚われ 鎧の完成 ここから先 できた鎧を、どう扱うか 自動で出る → 自覚して使う → 使わないことも選べる
各タイプの地図は、鎧がどうやってできたかまで。この記事は、できたあとの話をする。

気づいたら、それをやっていた

誰も口を開かない時間があって、気づいたら喋っていた。

資料に目を通していて、気づいたら直していた。頼まれてはいない。

誰かが困っているのを見て、気づいたら体が先に動いていた。

話がまとまりかけたのに、まだ引っかかっていて、まだ考えていた。

空気が固くなった瞬間、気づいたら間に入っていた。

どれも、やろうと決めてから始めていない。決める前に、もう動いている。

これを癖と呼ぶことにする。エニアグラムのタイプは、この癖の型のこと。9通りある。

昔ここで足りたから、いまも残っている

子どものころ、届きにくかったものがある。どのタイプにも、それぞれ違う一言がある。そのままで良いんだよ。あなたを必要としているよ。ちゃんと見ているよ。安全だよ。裏切ったりしないよ。どれが届きにくかったかで、育つ手が変わる。

届かないままでは困るので、自分でどうにかする手を作った。正しくやれば文句を言われない。役に立てば必要とされる。分かっていれば不意を突かれない。それぞれの埋め方がある。詳しい成り立ちは囚われの形成プロセスにある。

そのときの手が、いまも残っている。何十年も使ってきたので、いちばん速く出る。だから、決める前に動く。

楽だというのは、そういうこと。考えなくても振れる手が1本ある。

同じ手ばかり使うと、伸びすぎる

速く出るので、使うべきでない場面でも出る。直さなくていいものまで直す。頼まれていない場所まで手伝う。決まった話をまだ考えている。

これが囚われと呼ばれている状態。悪いものが新しく生えたのではなくて、同じ手が伸びすぎただけ。

だから、取り除く対象ではない。囚われも大事で書いたとおり、通っていないものは超えられない。

それでも、手放すより先にやることがある

囚われの話を知ると、多くの人はすぐ手放そうとする。順番が逆になっている。

使えていないものは、手放せない。

先にやるのは、自覚して使うこと。自分はこの手で動いている、と分かったうえで振る。同じ手を振るのだが、知りながら振る。

使えていると、終わったあとに何かが入る

自覚して振れるようになると、やり終えたときに入ってくるものがある。自分は正しくやれている。人の面倒を見られている。できるようになっている。力がある。自己価値と呼んでいるもので、タイプごとに中身が違う。

これが入ると、やった分が残る。次も振れる。

入ってこないと、いくらやっても軽くならない

同じだけ動いているのに、終わったあとに何も入ってこないことがある。

昇進した月に、自分はまだ何一つできるようになっていない、と書いた人がいる。周りから見れば達成している。本人の中では、達成として記録されていない。

足りないから動いた場合、達成が足りているに変換されない。最初から足りないことを前提に組まれているので、埋まった状態を扱えるようになっていない。

動いてはいるが、入ってこない。手放す話をする前に、まずこちらを済ませたほうがいい。

並べると、こうなる

1 自動で出ている 見えていない 2 気づく あとから、決める前に動いていたと分かる 3 自覚して使う 自己価値が入る 4 揺さぶられる その手が通じない場面に当たる 5 使わないことも選べる ここをずっとやる 本質 行き着かない 多くの人はここ まず、ここに難関がある 年単位でかかる ここまで来れば、基本的に困らない ここまで来る人は多くない いちばん難しいのはここ 一生できないかもしれない
3を飛ばして5に行こうとすると、振ったことのない手を降ろそうとすることになる。

多くの人は1にいる。自分に癖があること自体を、まだ見ていない。

そこから2を通って3まで来られる人は、そんなに多くない。3まで来れば、基本的に困らない。自分の手を知っていて、それで動けて、動いた分が返ってくる。手放せていないことを気にする段ではない。

誤解のないように書いておくと、1にいることと、うまくいっていないことは別。自動で出る手は速いし、強い。足りないという感覚は大きな力になるので、1のまま社会的に成功している人はいくらでもいる。むしろ、その手で結果を出してきたからこそ、握りが固くなっている。

逆に、3まで来たから成果が出る、という話でもない。この段は、うまくいっているかどうかの順番ではない。違うのは、走った分が自分に返ってくるかどうかだけ。

まず、2に難関がある

自分の癖は、自分にとっての普通になっている。普通は内側から見えない。だから、気づくのは知識を入れたら即できる種類のものではない。

時間をかけて少しずつ獲得していくもので、年単位になる。スキルというより、視力をゆっくり育てていく感じに近い。

手がかりになるのは、あとから振り返ること。やり終えてから、あれは決める前に動いていたな、と分かる。それを何度か重ねるうちに、動いている最中に分かるようになる。最初から最中で分かろうとしなくていい。

最初の難関がここにある。ただ、いちばん難しいところではない。それは5にある。

使えるようになると、通じない場面に当たる

3まで来ると、その手が効かない場面に当たるようになる。正しさが実際には間違っていたと突きつけられる。尽くした相手から拒絶される。積み上げた成果が空虚だったと露呈する。タイプごとに、当たる場所が違う。

避けたい出来事なので、通らずに済むならそのほうがいい、と思える。ただ、一度も揺さぶられたことがない状態は、癖を超えた落ち着きではなく、癖がまだ発動していないだけかもしれない。環境が変わったり逆風が吹いたりすれば、一気に崩れる。自分の手が通じない現場を体で知らないと、通じないまま立っている方法も育たない。

これを自己価値が揺さぶられると呼んでいて、9タイプ分の一覧が向こうにある。

順番として、ここは3の後ろに来る。使えていない手は、通じない場面に当たりようがない。振っていないものは、外れない。

5には、終わりがない

揺さぶられて、それでも自分が残ると、手の扱いが変わる。振るかどうかを選べるようになっていく。降ろしておく、も選べるようになる。

いちばん難しいのは、ここ。一生できないかもしれない。

そして、終わりのある段ではない。

手放しきることは、たぶん起きない。何年やっても、握っている手はそのままだと思う。癖が消えて、何も残らない日は来ない。

それでもやる理由は、向きが変わるから。着かないことと、向いていないことは別。

同じ場所で握り続けているのと、握ったまま緩めるほうを向いているのとでは、通る道が違う。同じタイプでも状態によって別人のように見えることがあって、それを健全度という軸で見る。健全度が動くというのは、たぶんそういう意味になる。

これは達成する目標ではなく、歩き続ける方向のこと

それでも目指す理由は、保証できない

ひとつ、正直に書いておく。5に近づくと幸せになるのか、うまくいくようになるのか。そこは保証できない。

1のまま力強く生きている人はいる。手を降ろせるようになったから生きやすくなる、という保証もない。降ろせる人が、降ろせない人より優れている、という話でもない。

それでも、複眼道場はあえてそちらを目指す立場を取っている。

得られるのは、選べる幅が増えること。同じ出来事を、いつもの角度以外からも見られるようになること。道場の名前にある複眼は、そういう意味で使っている。幸せでも成功でもない。ただ、その幅を豊かさと呼ぶ人がいてもいいだろう。

自分がどこにいるかは、自分で当てる

ここで段を判定はしない。判定を外から渡すと、当たっていても外れていても、自分で見る力が育たない。

手がかりはひとつだけ置いておく。やり終えたあとに、何か入ってくるか。

入ってくるなら、3にいる。動いているのに終わっても軽くならないなら、その手前にいる。そもそも動いた自覚がないなら、1にいる。

どれも悪い場所ではない。1を通っていない人は2に行けないし、3を通っていない人は5に行けない。

タイプごとに、中身が違う

ここまでは9タイプに共通する順番の話で、何が自動で出るかはタイプごとに違う。自分の行だけ見ればいい。

1 決める前に
動いていること
3 使えていると
入ってくるもの
入ってこないとき
どう見えるか
5 選べると
できるようになること
1頼まれていないものを直しはじめている正しくやれている直し終わっても軽くならない。次の粗が目に入る手を止められる
2困っている人を見て、先に手が出ている人の面倒を見られている尽くしても、足りていない感じが残る自分の要求を出せる
3この場で一番早く結果になる筋を探している際立っている出しても、次の未達成がすぐ立つ成果の無い時間に耐えられる
4そこにしかない違いのほうを見ている自分だけのものがある作っても、これじゃない、で終わる完成させられる
5その場で答えず、持ち帰って調べている分かっている調べても、まだ足りない気がする途中のものを人に見せられる
6うまくいかない場合を先に数えている信頼に足りている備えても、不安が減らない自分で決めて動ける
7次の面白そうなほうへ話を移しているのびのびできている移っても、まだ物足りないひとつに留まれる
8誰が決めるのかを、はっきりさせにいっている力がある通しても、また試されている気がする人に任せられる
9角が立たない言い方に直している収まっている収めても、落ち着かない自分の意見を出せる

3列目と4列目は、外から見ると同じ行動になる。違うのは、終わったあとに何か入ってくるかどうかだけ。同じことをやっている二人が、片方は積み上がっていて、片方は減っていく。

いちばん右の列は、目印にも使える。最近それができた場面があるかどうか。4なら、ちゃんと完成させたものが最近あるか。手前にいるあいだ、4は完成させられない。完成が妥協に見えるので、未完成のままのほうが安全になる。

この表を自分のタイプに開いたものが成長コンパスに出る。タイプ全体の見取り図は各タイプの地図にある。

決めつけの掟:見立ては、いつでも仮説。タイプのラベルは人に貼るためではなく、動機と構造を見るため、まず自分を見るために使う。「あの人は空焚きだ」と人を値踏みするためではなく、自分が何を目盛りにして比べているかを知るために使う。
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