呼び名と動機
逆に、持ち物すべてに置き場所が決まっていて、手順どおりに進めないと落ち着かない人は、「自分は1だ」と思う。けれど、ずれを見ても腹は立たず、決まっていると安心するだけなら、別のタイプのことも多い。
タイプの呼び名は、どれも、動機がある対象に向かったときに外から見える行動を指している。字面で探すと、行動の似ている人が集まってしまう。見るのは、行動の手前で何が起きているかだ。
字面で探すと、二つのずれが起きる
呼び名を行動の印として読むと、ずれは二方向に起きる。
- 外れる:動機はそのタイプなのに、行動が字面と違うので、自分を候補から外してしまう
- 流れ込む:行動は字面どおりなのに、動いている動機は別のタイプ
こうしたずれが起きるのは、人を説明しようとすると、どうしても行動で描くことになるからだ。動機は外から見えないので、目に見える行動のうち、そのタイプに多いものを代表に選ぶ。代表に選ばれた行動は分かりやすく、場面が浮かぶので、印象に残る。やがて、代表だったはずの行動が、タイプそのものとして覚えられていく。以下も行動で描いているので、同じずれは起きうる。並べた行動は、動機を見つけるための手がかりとして読んでほしい。
同じ動機でも向かう先が人によって違うことは動機と対象で、呼び名が囚われているときの姿からついていることは数字で呼ぶ理由で書いた。以下では、9タイプそれぞれについて、字面と動機のしくみを具体的な場面で並べる。
並べるのは、囚われが動いているときに出やすい姿で、タイプを決めるものではない。自分に当てて読んでほしい。周りの人に当てはめて、あの人は何番だと決めるためのものではない。
| タイプ | よく言われる呼び名 | 動機のしくみ(ひとことで) |
|---|---|---|
| 1 | 完璧主義・几帳面・真面目 | ずれを体が感じたら、直さずにいられない |
| 2 | 世話好き・優しい・お節介 | 必要とされることで、自分の居場所を確かめる |
| 3 | 成功者・野心家・バリキャリ | その場で価値があるとされる像に、自分を合わせる |
| 4 | 個性的・芸術家肌・繊細 | 自分には何かが欠けている、という感覚が底にある |
| 5 | 観察者・研究者・オタク | 分からないまま動かされたくない。手元を減らされたくない |
| 6 | 心配性・慎重・忠実 | 信じていい足場かを、確かめずには動けない |
| 7 | 楽天家・明るい・ポジティブ | つらい状態に閉じ込められたくない |
| 8 | 支配的・ボス・攻撃的 | 自分と身内のことを、人に決められたくない |
| 9 | 平和主義・穏やか・のんびり | 自分が前に出て、場やつながりが揺れるのは避けたい |
タイプ1:完璧主義・几帳面
しくみ。何かが「こうあるべき」からずれていると、体が先に反応する。落ち着かない、いらっとする。怒りを外には出さず、「直さなきゃ」に変えて、自分で直す。基準はその人の中にあって、どこに強くかかるかは人によって違う。仕事の仕上がりにかかる人もいれば、約束の守り方、言葉の使い方、公平さにかかる人もいる。ものの置き場所は、候補の一つにすぎない。
外れやすい人。部屋は散らかっているのに、待ち合わせに遅れてきた人にはずっといらいらしていて、自分が遅れた日は一日じゅう自分を責めている。そういう1は珍しくない。もう一つ多いのが、「ちゃんとできないなら手をつけたくない」1だ。片付けるなら全部きちんとやりたい。でもその時間がない。だから手をつけず、散らかった部屋を見るたびに、自分を責めている。本人は「完璧主義どころか、だらしない」と思っているが、中で動いているのは1の基準そのものだ。本に出てくるような、すべてのものに置き場所を決めている1もいるが、1の中ではかなり珍しい。
流れ込みやすい人。几帳面さは、ものが整っていること自体で落ち着く性質で、タイプとは別に持っている人がいる。手順が決まっていると安心する6、暮らしの段取りを整えることで落ち着く自己保存の強い人、持ち物や情報を自分の仕組みで管理する5。日本の学校は几帳面な子を「良い子」として拾うので、タイプに関係なく几帳面さを身につけた人も多い。
ずれを見つけたとき、まず腹が立つか。直すまで、体が落ち着かないか。
タイプ2:世話好き・優しい
しくみ。目の前の人がいま何を必要としているかが、自分の用事より先に気になる。応えて、相手の反応で、自分がここにいていいことを確かめる。必要とされない場面に置かれると、居心地が悪くなる。
外れやすい人。人の世話は面倒だと思っている2がいる。それでも、自分だけ誘われなかった集まりのことを何日も考えている。世話を焼くより、気にかけてもらえるとほっとする2もいる。自己保存の強い2に多く、かわいがられることで、自分の居場所を確かめている。
流れ込みやすい人。誰にでも穏やかで、頼まれると断らない人は、揉めたくない9のこともある。気配りが行き届き、場で求められる役をきちんとこなす人は、3のこともある。
助けた相手からお礼がなかったとき、少し寂しくなるか。相手が自分ではなく別の人を頼ったとき、何を感じるか。
タイプ3:成功者・野心家
しくみ。いまいる場で「できる人」「価値のある人」とされる像を、すばやく読み取り、そこに自分を合わせる。場が変われば、目指す像も変わる。何もしていない自分には、価値がない気がする。
外れやすい人。出世に興味がない3はいる。子育てに専念している人が、ママ友の中で「ちゃんとした母親」と見られることに気を張っている。趣味のサークルで、いちばん上手な人と見られる準備を欠かさない。会社の評価軸でなくても、いまいる集団の評価軸で、同じ動機が動く。目立ちたくない自己保存の3もいる。黙々と実績を積み、褒められると居心地が悪い。けれど、当てにされなくなるのはこたえる。
流れ込みやすい人。仕事ができて結果を出す人は、1にも8にも多い。1は基準どおりに仕上げたくて、8は自分で決めて動かしたくて、結果を出す。人からどう見えるかが中心にないなら、3ではないかもしれない。
誰の目にも触れず、評価にもならない仕事でも、同じだけ力を入れるか。自分に価値があると感じるのは、何をしているときか。
タイプ4:個性的・芸術家肌
しくみ。自分には何かが欠けている、周りとどこか噛み合っていない、という感覚が底にある。人と比べて足りないものに目が向き、欠けごと、人とは分け合えないものとして抱えている。関係の入り口で、「どうせ分かってもらえない」と先に思う。感覚を形にしようとすると、創作や装いに出やすい。芸術家肌という呼び名は、そこから来ている。
外れやすい人。芸術にも服にも興味がない、普通の会社員の4がいる。それでも、飲み会で皆が笑っている輪の中で、自分だけ外側にいる気がして、帰り道に落ち込む。本人は自分を個性的だとは思っていない。周りにうまく混ざれない、と思っている。
流れ込みやすい人。絵を描く、音楽に詳しい、感受性が強い。それが「好きだからやっている」で、人と比べて欠けている感覚がないなら、5や9、7のこともある。繊細さは、本能や気質からも出る。
自分にだけ何かが欠けている、という感覚が、子どもの頃からあるか。
タイプ5:観察者・オタク
しくみ。分からないまま動かされること、自分の時間や力を断りなく持っていかれることを避けたい。だから一歩引いて理解してから出ていき、手元に残せるものは残す。人と関わることはできるが、関わったあとに、一人の時間がないと持たない。
外れやすい人。知識に熱中する趣味もなく、人前で話すのも苦にならない5がいる。それでも、予定の詰まった週末のあとは、誰とも話さない日がないと調子が戻らない。急に会議に呼ばれると、話が見えるまで一言も出ない。一人の相手に深く関わる5(融合の5)もいるが、その場合も、潜る相手は自分で選んでいる。
流れ込みやすい人。一つの分野に詳しく、調べものが好きな人は、どのタイプにもいる。7は面白くて次々に調べ、6は安心するために調べ、1は正しく知りたくて調べる。調べる理由が「分からないまま出ていきたくない」かどうかを見る。
予定を急に入れられたとき、まず「自分の時間が減る」と身構えるか。
タイプ6:心配性・慎重
しくみ。この人は、この計画は、この足場は、信じていいのか。確かめないと動けない。確かめ方は人によって違う。人に聞く、決まりに沿う、先に疑ってかかる、自分から突っ込んでみる。
外れやすい人。自分を不安な人だと思っていない6は多い。むしろ大胆だと言われる。会議で上の人の案が出ると、真っ先に「それ、本当に通るんですか」と聞く。怖いものほど先に飛び込んで、危なくないかを確かめる6(対抗恐怖型)は、外からは恐れ知らずに見える。
流れ込みやすい人。慎重で、決まりを守り、準備を欠かさない人は、1や5、自己保存の強い人にもいる。1は正しいから決まりを守り、6は守っていれば安全だから守る。決まりそのものがおかしいと分かったとき、1は決まりを直そうとし、6は頼れるものを探し始める。
「大丈夫」と言われて、そのまま信じきれるか。聞き直したり、自分で確かめに行ったりしていないか。
タイプ7:楽天家・明るい
しくみ。つらいことや退屈な状態に閉じ込められるのを避けたい。気持ちが沈みそうになると、頭が次の楽しいこと、別の選択肢へ移っていく。
外れやすい人。物静かで、人前ではしゃがない7も、頭の中では次の計画を考え続けていて、一つの話が長く続くと落ち着かない。人のために動いて、自分の楽しみを後回しにする7(社会の7)もいる。場が沈むと、じっとしていられず、明るいほうへ動かしたくなる。
流れ込みやすい人。明るくて人を楽しませる人は、相手を喜ばせたい2、場を盛り上げる役をこなす3にもいる。
つらい話が続くとき、その場に留まっていられるか。気づくと話題を変えていないか。
タイプ8:支配的・ボス
しくみ。自分と身内のことを、人に決められたくない。踏み込まれたと感じると、体が先に動いて押し返す。守ると決めた範囲の内側にいる人には、驚くほど面倒見がいい。
外れやすい人。偉くなりたいと思ったことがなく、人前では穏やかな8も、自分の担当を知らないうちに決められていたと分かった瞬間、腹の底から一気に熱くなる。口に出さず、黙って腕を組んでいる8もいる。本人の実感は「支配したい」ではなく、「人に指図されるのは我慢ならない」に近い。
流れ込みやすい人。声が大きく、場を仕切り、はっきり物を言う人は、場で結果を出したい3、話が止まるのが嫌な7、間違いを正したい1にもいる。1との違いは、基準の当て方に出る。1は身内にも自分にも同じ基準を当て、8は身内の失敗をかばう。
自分のことを勝手に決められたと知ったとき、体に何が起きるか。
タイプ9:平和主義・穏やか
しくみ。自分が前に出ると、人とのつながりや場の落ち着きが揺れる。だから自分の意見や怒りを、感じる前に引っ込める。本人に我慢している自覚はなく、「別に、どっちでもいい」と感じている。
外れやすい人。毎日忙しく、職場で頼られている9がいる。人の用事を自分の用事として引き受けて動いているからで、「あなたはどうしたいの」と聞かれると、答えに詰まる。社会の9に多い。譲れない一点では、誰が何を言っても動かない9もいる。
流れ込みやすい人。穏やかで争いを好まない人は、2や5、自己保存の強い人にも多い。5は自分の時間を守るために引き、9は場が揺れないように引く。
「あなたはどうしたい?」と聞かれて、すぐに答えられるか。
呼び名は、入口として使う
呼び名を捨てる必要はない。最初に「これかも」と引っかかる入口にはなる。ただ、当てはまるかどうかは、字面でなく、そのとき体や心や頭で何が起きているかで確かめる。行動が似ている二つのタイプで迷ったら混同しやすいペア、見た目が動機と逆に出る場合は見た目と逆に出るタイプ、「完璧主義」「真面目」のような言葉ごとの違いは同名異物のシリーズに書いた。
呼び名とずれていることは、別のタイプである証拠にはならない。字面どおりであることも、そのタイプである証拠にはならない。動機まで降りて確かめ、最後は自分で決める。