トップ複眼道場についてなぜエニアグラムを核に据えるのか

複眼道場

なぜ複眼道場はエニアグラムを核に据えるのか

診断の優劣ではなく、目的から逆算する話
MBTIやストレングスファインダーを通ってここに来た人は多いはずです。それなのに、この道場の真ん中にあるのはエニアグラム。「で、なんでエニアグラムなの?」という問いに、この記事で答えます。どの診断が正しいか、の話はしません。複眼道場が何をしたいかから逆算する話です。

優劣の話はしない

先に立場をはっきりさせておきます。性格診断はそれぞれ測っている層が違います。エニアグラムは動機(なぜやるか)、MBTIは認知の癖(どう処理するか)、ストレングスファインダーは行動の癖(何ができるか)。競合しているのではなく、同じ人を別の角度から切っています。だから重ねて読むほど解像度が上がる。この整理は性格形成の階層と診断に書いたとおりで、今も変わりません。

ただ、層が違うと分かっても、まだ残る問いがあります。全部の診断を同じ深さで使い込むことは、現実にはできません。日々の観察をどの体系の上に積むのか、核をひとつ決める必要がある。そのとき効いてくるのは「どれが正しいか」ではなく、「それで何をしたいか」です。

性格系ツールの全体地図

選ぶ前に、候補を一望しておきます。世の中の性格系ツールを「何を扱っているか」と「何が得意か」で整理すると、おおまかに5つの系統に分かれます。

系統代表的なもの扱っているもの得意なこと
科学・統計系ビッグファイブ、HEXACO、16Personalities(MBTIの4文字表記を借りているが、中身はこちら寄り)統計的な因子の強弱(連続値)学術的な裏付け。採用や成果予測など、集団を対象にした判断
行動・強み系DiSC、ストレングスファインダー、エゴグラム行動の傾向、強み、対人スタイルチームの共通言語づくり。対人関係の調整
認知・タイポロジー系MBTI、ソシオニクス、サイコソフィア認知機能の配置、情報の捌き方の癖思考の癖や、人と噛み合わない場面の構造の説明
深層動機・発達系エニアグラム、成人発達理論、インテグラル理論動機と恐れの構造、意識の育ち方「なぜそうするのか」の解剖。状態や成長の記述
影の統合・実践系シャドウワーク、免疫マップ(ITC)、マネーワーク変化を阻む固定観念、抑圧してきた自分自覚したパターンを、実際の場面で扱う練習

系統が違うのは、想定している使い道が違うからです。集団の判断に使いたいのか、チームの会話に使いたいのか、思考の癖を説明したいのか、動機を掘りたいのか、掘ったものを現場で扱いたいのか。どの系統にも持ち場があって、系統どうしに優劣はありません。

複眼道場の道具立てであるエニアグラムとインテグラル理論は、この中の深層動機・発達系に属します。なぜこの系統に軸足を置くのか。それが次からの話です。

複眼道場がやりたいのは、見え方が変わるほうの成長

成長には2種類あります。知識やスキルが増える水平的成長と、同じものを見ても見え方が変わる垂直的成長。詳しくは垂直的成長と水平的成長に書きましたが、複眼道場が目指しているのは垂直のほうです。

タイプの用語を覚えるのは水平です。「自分にはこういう見方の癖がある」と腹落ちして、昨日と同じ場面が違って見える瞬間が垂直です。目的をここに置くと、核に据える診断に求める条件が変わってきます。条件は2つあります。

条件その1:縦の物差しがあるか

縦の物差しというのは、同じ型のまま、状態が上がったり下がったりするのを記述できる軸のことです。見え方が変わる成長を追いかけたいなら、変わったかどうかを測る目盛りが体系の中に要ります。この観点で、主な診断を並べてみます。

診断測っているもの変化をどう扱うか
MBTI認知の癖(情報の処理スタイル)型そのものは生涯変わらない前提。変化は機能の成熟として扱う
ビッグファイブ5つの因子のスコア(統計的な特性)スコアは年齢とともにゆるやかに動く。今の姿の精密な記述に強い
ストレングスファインダー上位の強み(結晶化した行動の癖)順位の入れ替わり。伸ばす前提だが、強みの影は扱わない設計
エニアグラム動機と恐れの構造同じ型のまま健全度が上下する。統合と分裂で状態の移り方まで記述する

誤解のないように言うと、どの診断も設計どおりの仕事をしています。MBTIは「変わらない癖」を記述するための道具だから縦の目盛りを持たないのであって、欠陥ではありません。ビッグファイブの学術的な信頼性は、この中で最も高い。それぞれの持ち場があります。

そのうえで、「同じタイプでも状態しだいで別人のようになる」を最初から体系の中に組み込んでいるのは、この中ではエニアグラムです。健全度という9段階の目盛りと、統合・分裂という状態の移り方。型を張り替えることなく、同じ型の内側で上下を記述できる。垂直的成長を追いかけるための目盛りが、装備としてすでに付いています。

型A 型B 型C 横に増やす(種類) 同じ型 縦を見る(状態)
型の種類を増やしても、状態の上下は見えてこない

条件その2:恐れに触れているか

もうひとつの条件は、痛いほうの話です。

垂直的成長は「同じ方向にもっと頑張る」では起きません。自分が最も恐れていることに手を付けるときに、ようやく起きます。

これは垂直的成長と水平的成長で書いた話です。とすると、核に据える診断には、恐れが射程に入っていてほしい。認知の癖や強みの記述は、恐れに触れないまま完結できます。繰り返しますが、それは欠点ではなく設計です。採用や配置やチームビルディングでは、恐れに触れない診断のほうが向いている場面が多いくらいです。

エニアグラムは、9つの型を根っこの恐れから規定します。「何が得意か」ではなく「何を避けるために、その得意が育ったのか」を記述する。だから自分のタイプの解説を読むと、痛い場面があります。よく当たるから痛いのではなくて、いちばん見たくないものから逆算して書かれているから痛い。

そして、痛い場所は避けたい場所で、避けたい場所は垂直のハシゴが立っている場所です。恐れを名指しできる体系を核に置くのは、そこに近づくためです。

「説明がついて安心する」で止まる日もある

ここでひとつ、エニアグラム自身にも跳ね返る話をしておきます。

型を知った直後によくある使い方があります。直すでもなく、活かすでもなく、説明して終わる。「動く前に調べたくなるのは、この型だからか」と分かって、妙に安心する。この使い方は、どの診断でも起きます。エニアグラムでも普通に起きます。

これは悪いことではありません。それまで「なんで自分はこうなんだ」と責めていた人にとって、説明がつくこと自体が大きな一歩です。エニアグラムを学ぶ目的で書いた「気づきの5段階」の、最初の段がここです。

ただ、そこに住みつくと、型が「変わらない理由」の置き場になっていきます。「この型だから動けない」は、観察のようでいて、観察をやめる宣言に近い。複眼道場は、説明がついた場所を終点ではなく観察の開始地点として扱います。説明がついたということは、次にその場面が来たとき、自分のパターンが動き出す瞬間を見られるということなので。

核はひとつでいい。ほかを捨てる必要はない

最後に、冒頭の立場に戻ります。MBTIもストレングスファインダーもビッグファイブも、重ねて読めば解像度が上がります。捨てる理由はありません。実際、複眼道場でもMBTIは自己申告で持ち込んでもらって、エニアグラムと重ねて読んでいます。

ただし、核は複数持てません。縦の物差しを当てる場所が毎回変わると、観察が積み上がらないからです。同じ1点を定点で見続けるから、状態の上下が見えてくる。横に広げることと縦を通すことは両立しますが、縦を通す軸だけは1本に絞る必要があります。同じ理屈をエニアグラムの内側でやったのがトライタイプを道具として使わない理由で、あちらでは「3つ選べると、認めたくない恐れを通らずに済んでしまう」という形で出てきます。

それと、エニアグラムは万能ではありません。占いと複眼道場で書いたとおり、エニアグラムが直接扱えるのは「性格」の領域です。だから複眼道場では、視点の地図をインテグラル理論が受け持ち、日々の観察の相手をAIが受け持ちます。エニアグラム×インテグラル×AIという組み合わせは、核をひとつに絞ったうえで、核が扱えない範囲を別の道具で囲む構えです。

エニアグラムが核なのは、いちばん人気だからでも、いちばん当たるからでもありません。見え方が変わる成長を追いかけるための目盛りと、恐れへの入り口を持っているからです。目的が違えば、核に据えるべき診断も違ってきます。採用のためならビッグファイブが核になるでしょうし、チームの共通言語ならストレングスファインダーが核になる。複眼道場の目的には、エニアグラムでした。そういう選び方の話です。

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