営業に向いているのはSOか
── 職種の名前で切ると、外す
営業に向いているのは社会(SO)、と言われる
人に会うのが仕事で、名前を覚えられて、輪の中で動く。だから社会(SO)が優勢な人が向いている。そう言われることは多いし、実際そう見える場面もある。
ただ、営業と呼ばれている仕事を三つ並べてみると、要るものがまるで違う。
営業を、三つに割ってみる
1. 場と立場で動く営業
展示会のブースに3日立って、名刺を200枚もらう。業界の懇親会で、初対面の人と15分ずつ話して回る。社内では、法務と情シスと経理に順番に話を通して稟議を進める。誰に先に言えば早いかが、頭に入っている。
この形では、顔が広いことがそのまま成績に効く。社会(SO)が優勢だと、懇親会から帰ってきたあとに、疲れているというより頭が整理されていることがある。人の名前と、誰と誰が繋がっているかが、勝手に残る。
きついのは、一人とじっくり話したいタイプ。15分ずつ回るのが、ただの消耗になる。
2. 一件ごとに深く入る営業
ソリューション営業と呼ばれる形が近い。一社の商談のために、準備で丸一日かける。ヒアリングでは、相手が「ちょっと困っていて」と言った一言に引っかかって、そこを30分掘る。相手がまだ言葉にできていなかった問題を、こちらが先に言い当てて、そうなんですよ、と返ってくる。提案書は、その会社のためだけに一から書く。
決まるのは、一件にどれだけ入り込めるか。融合(SX)が優勢だと、この潜り方が自然に出る。
訪問件数のノルマがあると苦しくなる。浅いやりとりを一日8件こなすと、数字は出ていても、何もやっていない気持ちになる。
3. 崩れない仕組みを作る営業
初回訪問で聞くことを10項目に固定して、毎回同じ順で聞く。商談メモの型を決めて、誰が見ても引き継げるようにする。月の訪問数から逆算して、一日の予定を組む。提案書は8割を流用して、2割だけ書き足す。あとで自分が回らなくなる受注は、取らない。
効いてくるのは、同じ品質を毎回出せるかどうか。自己保存(SP)が優勢だと、この作り込みが得意なことが多い。長く走れる形を先に組んでから走る。
毎回ゼロから組み立てる働き方だと、途中で息が切れる。一件ごとに全力を出す形は、長くはもたない。
三つとも営業と呼ばれている。求人票では、たぶん同じ欄に並ぶ。
他の職種でも、同じことが起きる
エンジニアなら、仕様の合意を取りに関係者の間を往復する仕事と、一つの領域に何年も潜る仕事と、深夜に起きなくていい運用を作る仕事がある。人事なら、採用イベントで母集団を作る仕事と、一人の面談に90分かける仕事と、評価制度を毎年同じ手順で回せるように整える仕事がある。
どれも、職種名は一つしかない。
なぜ、職種名で切ると外れるのか
職種の名前は、外から見える行動でついている。営業は人に会う仕事、経理は数字を扱う仕事、というように。
本能のほうは、行動ではなく、どこにエネルギーを使うかで分かれている。同じ「人に会う」でも、誰と誰が繋がっているかを見ている人と、目の前の一人の困りごとを見ている人と、次も同じようにやれる形を見ている人がいる。外から見える動きが同じでも、中で起きていることが違う。
同じ構造は行動と動機の断層でも扱っている。行動の名前で分けると、動機のほうは見えなくなる。
見るのは、一日の終わりに何で疲れているか
合う合わないを考えるとき、職種名より手前に、もう一段細かい単位がある。一日が終わったときに、何でいちばん疲れているか。
営業をやっていてしんどかったとして、しんどかったのが商談そのものだったのか、移動と社内調整だったのか、人前に立っていた時間だったのかで、話がまるで変わる。しんどかったのは、仕事そのものではなく、その中の一部分だったかもしれない。
ここは自分では見えにくい。しんどかった記憶は、たいてい職種名にまとめて貼り付く。
職種ごと諦めると、次も外しやすい
辞めた理由が「営業が向いていなかった」だと、次に選ぶときの手がかりが職種名だけになる。営業を避けて別の職種に移っても、その中に同じ部分が入っていれば、また同じところでしんどくなる。
逆のこともある。合っていた部分だけを残せる場合がある。会社を変えなくても、担当を替えるだけでしんどい時間が減ることがある。職種を変えるより先に、割り振りを見直すほうが早い場合もある。
本能は、職業適性表ではない
本能の優先順位が分かっても、向いている職業のリストは出てこない。代わりに手元に残るのは、どこで消耗して、どこで回復するかの目盛りだ。
同じ営業でも、ある人には消耗しかなく、ある人には回復が混じる。その差は、能力でも根性でもなく、どこにエネルギーが向くかの違いから来ている、と読むこともできる。
それが分かると、向いていないから辞める、以外の手が増える。仕事の中身を組み替える、という選び方ができるので。
タイプ(動機)の側から同じ問いを扱ったのが、エニアグラムで適職はわかるかです。