定位は、いまも動いている
相手は変わるのに、同じことが起きる
定位が動いている場面には、目印があります。「また」が付くことです。相手は毎回違うのに、起きていることが同じ、という形で出ます。
- 転職するたび、気づけばまた「この人に聞けばいい」という相手を一人見つけている。見つけること自体は自然だが、毎回、似た手順で似た相手を選んでいる
- 上司が変わったのに、数ヶ月すると前と同じ悩み方をしている。相手のタイプは違うのに、行き着く場所が同じ
- 会議で発言する前に、その場でいちばん上の人の顔を一瞬見る。探す相手は毎回違うが、探し方は変わらない
- 「手伝おうか」と言われて、要るかどうかを考える前に「大丈夫です」と返している
相手が毎回変わっているなら、共通しているのは相手ではありません。持ち込んでいるほうです。
三つの関わり方は、職場でこう出る
定位では、二つの役割(受け止める役と、導く役)への関わり方が三通りに分かれると考えます。結びつき、両価的、欲求不満。この三つは、職場でもそのまま出ます。
| 受け止める役に対して | 導く役に対して | |
|---|---|---|
| 結びつき | 応えることで居場所を作る。求める前に「何に応えればいいか」を先に探す | 決めてくれる人を見つけ、その枠を守る。枠が外れると落ち着かない |
| 両価的 | 認められたいが、委ねきれない。信頼できそうな相手ほど、一度試す | 頼りたいが、頼りきると危ないと感じる。距離を測りながら近づく |
| 欲求不満 | もう求めない。自分で調達する。差し出されると、うれしいより先に居心地が悪い | 外の基準を当てにしない。自分の中に判断の軸を建てる |
囚われている場合ほど、この出方が強く固定されます。どれが良い悪いという話ではなく、当時それで安定したやり方が、そのまま残っているだけです。9タイプとの対応は親との定位にあります。
結論は、自分で証拠を作る
定位が長く続くのには、理由があります。三つの関わり方は、その人が幼い頃に出した結論です。そして結論は、自分に合う証拠だけを集めます。
「求めても来ない」と考えている人は、求めません。求めないので、来ません。やはり来なかった、と確信が強まります。
「応えれば得られる」と考えている人は、応えます。応えるので、応えた分だけ返ってきます。やはりそうだ、となります。応えなくても受け止めてもらえるかどうかは、一度も試されないままです。
「当てにならない」と考えている人は、試します。試された相手は、少し引きます。やはり信じきれなかった、となります。
意志や努力が足りないから変わらない、という話ではありません。実験の設計のほうが先に決まっています。反証の入る余地が、最初から閉じられています。
求める先は、人とは限らない
役を置く相手は、上司や同僚とは限りません。
会社そのものに、受け止める役を求めている場合があります。理念に共感して入り、自分を丸ごと受け止めてほしいと考える。けれど会社が渡せるのは条件付きの評価なので、無条件のものは最初から入っていません。構造として埋まらないものを、待ち続けることになります。評価面談で、点数より上司の言い方の温度のほうが気になる、という形で出ることもあります。
導く役のほうを、制度や数字や資格に置いている場合もあります。「◯◯によれば」で判断が決まる状態です。理論も置き場所になりうるので、エニアグラムがその対象になることもあります。タイプを自分で決めるという原則を置いているのは、そのためでもあります。
上の位置からは、見えにくい
この関係は、上の位置から見えにくい構造になっています。
理由は単純です。下の位置にいる人は、上の人を読まないと不利になるので、読んでいます。機嫌も、言い方も、今日は聞ける日かどうかも。上の位置にいる人は、下の人を読まなくても仕事が回るので、読みません。同じ関係についての情報量が、上に行くほど減ります。
そして上の位置にいる人は、自分の位置を力として体感しません。実力だと思っているか、役割だと思っているか、たまたまだと思っている。力として感じられないのが、力が働いている状態です。感じられるようなら、すでに揺らいでいます。
守っているつもりの行動が、相手には枠として届くことがあります。この差は体感に乗らないので、下の位置にいる人から言われるまで分かりません。悪意なき加害と同じ場所の話です。
編み直しは、この場面でしか起きない
親との定位の記事は「定位は編み直せる」で終わっています。その編み直しが起きるのは、過去を振り返っている時間ではなく、日常のこういう場面です。
求めないと決めていた人が、一度だけ求めてみる。応えることで居場所を作ってきた人が、応えないまま座っている。試さずに預けてみる。どれも小さくて、その場では何も起きないように見えます。ただ、結論が証拠を作る構造からすると、反証が入るのはこういう場面です。
これは、自分を直す話ではありません。取った居場所は、当時の最適解です。直すのではなく、含んだまま超えるという順番で扱います。そのために、まずどの場面で自動的に出ているのかを見る。順番としては、それが先です。